製菓男子。
おもむろに振り返った宮崎さんとばちっと目があう。
宮崎さんは空を数秒仰いでから、店内に入ってきた。
「あれ、いたの?」と荒川さん目がけて失礼なことを言いながら。


「妹しか見えてないってか」
「そんなことない。ミツキも見えてた」
「見えてないのはおれだけってか?」
「そう」


宮崎さんは軽く呟いて、わたしに「食べる?」と訊いてきた。


「食べるってなにをですか?」
「今日、レッスンで作ったケーキの残り」
「どんなものを作ったんですか?」
「イチゴのショートケーキ」
「それはおいしそうですね」


そのほかにもチョコチップのちぎりパンも作ったようで、間に入ってきた荒川さんがお持ち帰りすることになった。
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