製菓男子。
「鍵取って来る」


手荷物を二階に置いてきてしまったのだそうだ。


「わるいですよ、大丈夫です!」


今でさえ接客で大迷惑をかけているのに、そこまでしてもらったら、どうお礼をしていいかわからない。


「否定されると傷つく」
「え、あ、ごめんなさいっ」


どう会話すれば宮崎さんに正しく気持ちが伝わるのだろう。
おろおろしていたら、塩谷さんに笑われた。
涙目になるほど、わたしはおかしいことをしているのだろうか。


「いやー、微笑ましいなぁと思ってさ。成長、成長!」


塩谷さんはひとしきり笑うと、椅子から腰を上げてわたしに近づいた。
スノーボールクッキーのようなほろほろした笑顔を浮かべている。
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