製菓男子。
「ゼンが本屋に行きたいんだと思うよ? あのとおり和菓子屋さんに対して拗ねてるし、息抜きしたいんじゃないかな。チヅルちゃん、ゼンにつきあってあげてくれる?」
「え、でも、行きたいのはわたしで―――」
「そーいうことだろ、ゼン」


塩谷さんは確認するように振り返った。
宮崎さんは短く「そう」と言って頷いた。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


ここまで言われてしまえば、断る理由が見つからない。


「今日はそのまま帰っていいからね。ゼン、チヅルちゃんを送り届けてやって」
「そのつもり」
「でもゼンは帰ってくるんだからな」
「えー、いや」
「いやってお前なぁ―――」


宮崎さんはコックコートを脱いで、それを塩谷さんに投げ渡した。


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