製菓男子。
...。oо○**○оo。...。oо○**○оo。...。oо○**○оo。...
書店に行くのは何年振りだろうかと指を折って数える。
高校の頃もほぼ今と変わらない家と学校の往復しかしていなかったし、当然中学も同じ。
そうなると小学生以来となって、それも母がいたときに連れて行ってもらったくらいだと思う。
そうなってくると両手で数えられなくなってくる。
母は父が浮気すると決まって調理家電を新調し、お菓子の本を買ってきた。
「チヅルちゃんはどんなお菓子が食べたい?」と一緒に本を選ぶことも多くて、「プリンが食べたい」「ロールケーキが食べたい」「フォンダンショコラが食べたい」と次々にあげて、わたしの希望を叶えてくれた。
離婚以来わたしは一度も母に会っていないけれど、兄から「ここよりさらに田舎でカフェをやっている」と聞いたことがある。
「二五〇円です」
レジ係の女性が案内する声に、わたしは大きく身体をびくつかせてしまった。
挙動不審もはなはだしい。
財布を持つ手からして震える。
そこから一枚一枚、ゆっくり硬貨を取り出し、ぴったりの金額をレジ台に置いた。
レシートもいらない旨を伝え、女性の手に触れないように商品を受け取った。
高校を卒業した翌日から、わたしは家の敷地内から一歩も出なくなった。
学生時代ごく稀に学校帰りにスーパーに立ち寄ったこともあったけれど、それがなくなったため、買い物をするというのは実に三年振りくらいになる。
その当時もお釣りが出ないように、徹底的に小銭をそろえていた。
(レシートも絶対に受け取らないっていう―――)
書店に行くのは何年振りだろうかと指を折って数える。
高校の頃もほぼ今と変わらない家と学校の往復しかしていなかったし、当然中学も同じ。
そうなると小学生以来となって、それも母がいたときに連れて行ってもらったくらいだと思う。
そうなってくると両手で数えられなくなってくる。
母は父が浮気すると決まって調理家電を新調し、お菓子の本を買ってきた。
「チヅルちゃんはどんなお菓子が食べたい?」と一緒に本を選ぶことも多くて、「プリンが食べたい」「ロールケーキが食べたい」「フォンダンショコラが食べたい」と次々にあげて、わたしの希望を叶えてくれた。
離婚以来わたしは一度も母に会っていないけれど、兄から「ここよりさらに田舎でカフェをやっている」と聞いたことがある。
「二五〇円です」
レジ係の女性が案内する声に、わたしは大きく身体をびくつかせてしまった。
挙動不審もはなはだしい。
財布を持つ手からして震える。
そこから一枚一枚、ゆっくり硬貨を取り出し、ぴったりの金額をレジ台に置いた。
レシートもいらない旨を伝え、女性の手に触れないように商品を受け取った。
高校を卒業した翌日から、わたしは家の敷地内から一歩も出なくなった。
学生時代ごく稀に学校帰りにスーパーに立ち寄ったこともあったけれど、それがなくなったため、買い物をするというのは実に三年振りくらいになる。
その当時もお釣りが出ないように、徹底的に小銭をそろえていた。
(レシートも絶対に受け取らないっていう―――)