製菓男子。
「車なら、送ってあげたほうがよかったんじゃないですか?」
「大丈夫、若いから」


宮崎さんは兄と同級生で、早生まれだというから二十六歳。
確かにその年齢からみれば高校生は確かに若いけれど、宮崎さんより年上の方が聞いたら怒られそうな発言だ。


「若くても濡れると風邪引きますよ?」


宮崎さんはじっとわたしの瞳を見つめている。
おそらく宮崎さんは会話のためにわたしの顔を見ているのだろうけれど、そんなこと知ったことかと言わんばかりに、わたしの心臓が大暴走をしている。


どきどき、ばくばく、どきどき、ばくばく。


“イケメン”ともてはやされる兄の顔、塩谷さんの顔、荒川さんの顔、宮崎さんの顔。
今まで、そして今でもその言葉に納得できないでいるのだけれど、宮崎さんの顔だけは特別みたいだ。
見ているだけで心臓が高鳴るというのは、宮崎さんだけは、正真正銘の「イケメン」なのかもしれない。


「もっとツバサと喋りたかった?」
「そんなことは……」


人見知りだと充分自覚しているから、ごめん被りたい話だ。


「じゃあ、僕とふたりきり、いや?」
「いやじゃないですよ」


(いやだったらそもそも、連れてきてもらいませんし)
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