製菓男子。
宮崎さんも言葉足らずだけれど、わたしも負けないくらいに言葉が足らない。
「目は口ほどにものを言う」ということわざがあるくらいだから、気持ちが伝わるように、宮崎さんの色素の薄い瞳を見つめ返す。
すると宮崎さんは急にそっぽを向いて、口もとを押さえ黙った。


「わたし、なにか気に触ることしましたか?」


やっぱりなにも言わないより、言葉で伝えたほうがまだよかったのかもしれない。


「あの、本当にいやとは思っていなくて、むしろ連れてきてもらえて、助かっていて―――えっとその、もしかしたらというか、そもそも宮崎さんのご迷惑になっていないかなって不安のほうが大きくて、申しわけなくって」


必要な言葉は足りないくせに、余計な言葉が多い。
途中からどんなことに対して弁明しているのかわからなくなってくる。


「わたしは気づかないことが多くて、至らないことも多くて、知らない間に人を傷つけていることも多くて」


(―――宮崎さんに、きらわれたくないな)


わたしの涙腺はシャボン玉のように脆くできているらしく、やっぱり簡単に気持ちがはじけて涙が滲んでしまう。


「僕にその顔、見せないで」
「すいません!」


ごめんなさいと俯くと、涙がぽとんと傘を持つ手に落ちた。


(わたしのことそんなに、きらいになっちゃったのかな)
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