製菓男子。
というのが、宮崎さんの指に触れたことで見えた映像だ。
わたしは人の手に触れると、触れた人の少し先の未来が見える。
しかもそのとき、わたしは触れた本人の視点と気持ちと一緒になっている。
宮崎さんはだれかに依頼され、若葉高校の制服を調達することになって、悩んでいる。
(悩みどころが違うような気がするけど)
しかも宮崎さんは自室にいるようで、ひたすら白い壁を見ている。
壁の先になにかがあるように、当たり前に見ている。
(宮崎さんがやっぱりよくわからない)
人の少し先の未来と心が見えるということ。
月曜日以外は当たり障りのない未来で、いささか罪悪感が薄れるけれど、それでもそれはテストをカンニングするようなもので、気分がよくない。
カンニングは不正行為で大学入試なんぞでやったら、せっかく合格しても取り消されてしまうし、最近ではインサイダー取引のようだとも思うようになり、ますます肝が冷える思いをしている。
できるなら以前のように人に関わらないように、家にこもってすごしていたい。
しかしそれを、兄が許してくれない。
わたしにとって兄は絶対的な存在で、君主で、逆らえない。
幼い頃から染みついた上下関係に下克上できるほどわたしは強くできていない。
兄に紹介してもらった今の職場だけれど、いつでも本心は脱兎の如く逃げたい気持ちでいっぱいだ。
そんな心情を宮崎さんも塩谷さんも汲んでくれていて、貴重品を保護する綿のように見守っていてくれる。
それは友人の妹だからということもあるのだろうし、猫の手も借りたいほど店が忙しいということもあるのだろうと思う。
わたしは人の手に触れると、触れた人の少し先の未来が見える。
しかもそのとき、わたしは触れた本人の視点と気持ちと一緒になっている。
宮崎さんはだれかに依頼され、若葉高校の制服を調達することになって、悩んでいる。
(悩みどころが違うような気がするけど)
しかも宮崎さんは自室にいるようで、ひたすら白い壁を見ている。
壁の先になにかがあるように、当たり前に見ている。
(宮崎さんがやっぱりよくわからない)
人の少し先の未来と心が見えるということ。
月曜日以外は当たり障りのない未来で、いささか罪悪感が薄れるけれど、それでもそれはテストをカンニングするようなもので、気分がよくない。
カンニングは不正行為で大学入試なんぞでやったら、せっかく合格しても取り消されてしまうし、最近ではインサイダー取引のようだとも思うようになり、ますます肝が冷える思いをしている。
できるなら以前のように人に関わらないように、家にこもってすごしていたい。
しかしそれを、兄が許してくれない。
わたしにとって兄は絶対的な存在で、君主で、逆らえない。
幼い頃から染みついた上下関係に下克上できるほどわたしは強くできていない。
兄に紹介してもらった今の職場だけれど、いつでも本心は脱兎の如く逃げたい気持ちでいっぱいだ。
そんな心情を宮崎さんも塩谷さんも汲んでくれていて、貴重品を保護する綿のように見守っていてくれる。
それは友人の妹だからということもあるのだろうし、猫の手も借りたいほど店が忙しいということもあるのだろうと思う。