製菓男子。
兄が身じろぎする。
このまま永久に寝てろという気持ちをぐっと抑える。


「出張お疲れさま。今夕飯作るね? ジャンプ読んで待っていてくれる?」


帰ってくるとご飯が出てくる。
そんな環境じゃないと怒り出す、亭主関白を発揮する兄だけれど、今日は様子が違うようだ。


(せっかくジャンプ買ってきたんだから読めっての)


わたしは臨戦状態でリングに上がっているのに、相手の都合で不戦勝になったような、そんな心境になってくる。


「仕事、そんなに疲れたの?」


兄は空返事しかしない。
これはいよいよおかしい。
季節は初夏になろうとしているのに、雹とか雪とか、槍が降ってくるかもしれない。


そのうち兄は大きく咳き込んで、ひっそりと寝息を立てはじめた。



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