ミリオンラバー
「あっそれとも私のこと待ってたの」

あり得ないところに考えが及んだところで小暮がブチ切れた。

「あほか!んなわけねーだろ!」

中学時代に少しだけやんちゃだった小暮だ。

明るく脱色した髪。

耳に開けたピアス。

その目立つ風貌のせいでよく呼び出しをされた。

それなりの経験から、周囲からは恐れられている。

すごむと大抵ビビられるのだが、目の前の女子はそれにびくともしなかった。

それどころか「えへ。じゃあ学校行こうよ」とさりげなく小暮の腕を掴んでくる。

「腕を掴むな!」

「え―だめ?」

「ほんと何なんだお前は…」

小暮は頭を抱え込んだ。

入学式から小暮にまとわりつく女、坂梨柚羽。

小暮の最も苦手な女である。
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