姫はワケあり黒猫様
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『うぎゅ…』
間抜けな声を零しながら意識が突然体にもどった。
ピリピリした殺気が肌を刺激する。
何だよー、不良は学校でも殺気を撒き散らすのかー?
私はそんな事を考えながら突っ伏してた顔を上げた。
欠伸をして椅子の背もたれに凭れかかると同じタイミングに教室のドアが開いた。
『くぁー…』
欠伸思いっきりしてスッキリとした気分になる。
よし、寝不足が解消された気分だ。
「……おい」
あー、突っ伏して寝てたから首痛いー。
携帯にイヤホンをさして片耳につける。
「……おい」
あ、そういやにゃんにゃがにゃんにゃんの曲入れたんだ。
「…おい」
聞こうっと。
「おい」
耳元で低い声が聞こえて振り向くと綺麗なお顔が目の前にあった。
『わー、綺麗な顔ー』
柔らかそうな頬をつつくと、柔らかかった。
何コレめっちゃ気持ちいい‼
『うわー、ぷにぷにだー』
「……」
「「「……」」」
クラスの皆が間抜け面で私の方向を見ている。
それに気付いて手を引っ込めて黒板を見る。
あ、今授業中だったの…
苦い表情をして机に向き直ると、静寂。
……あの、先生?
『…授業しないんですか?』
「ぉ、お前……バカなのか…」
中年のハゲたおっさんは私を見て驚いたように呟く。
『はぁ?!
お前みてぇなハゲに言われたかねぇよ‼』
噛み付く勢いで言い散らすと隣らへんでふっと小さな笑い声が聞こえた。
「……」
「何か思ったような子じゃなさそーよ?」
からかうような口調でさっきの綺麗な男の肩に腕を置いて諭す男。
「響、うるせぇ」
「ぎゃははっ」
大声で笑う響と呼ばれた男。
綺麗な男は耳元で笑い声を聞かされて不機嫌そうに響という男を肩から退かした。
「……」
綺麗な男は無言で私の腕を掴んで引っ張って立たせた。
……はい?
『……離してくれたります?』
「する訳ねぇだろ」
ですよね。
心の中でやっぱりな、と思ってたら引っ張られた。
バランス崩して倒れるとこだったっ!
『離せっ自分で歩く‼』
「……」
くそやろぉぉぉお‼
無言でスルーしやがるこん餓鬼‼
死ね‼
「……あんま大口叩くんじゃねぇぞ」
綺麗な男は私を睨んで歩くスピードを上げた。
コワッ‼激怖っ‼
鬼だ、鬼‼
「……黙れっつの」
私の口に手を重ねて塞ぐ。
い、息がぁぁぁあ‼
「鼻で息しろや、バカ」
後ろを歩く男の1人に呆れた様に言われ、ハッとする。
その手があるっ‼
「……こいつ、頭大丈夫か?」
「さぁ?」
「……」
後ろの男達は口々に何かを言いながらも仲良さげに並んで、私と綺麗な男に着いてくる。
まじ、どこ連れてくんだよぉぉお…