姫はワケあり黒猫様
『バイク?
優の?』
「うん。
嫌?」
『別に、バイクは好きだよ』
笑ってそう言うと、優は小さく口元に笑みを浮かべてキーを差した。
「那琉、」
優が手招きしてきたから近寄ると、私の腕を引いて脇に手を差し込んだ。
『……おいおいおい、待て待て待て』
「何が?」
『何が?じゃないだろッ‼』
頭を軽く叩くと、「いたっ」と言いながら私をバイクの上に乗せた。
『本当に海行くの?』
「うん。どっか別のところがいい?」
『……海が、いい』
“別のところがいい?”
聞いてるクセに、そんな悲しそうな顔しないでよ。
ズキンと胸が痛むのを感じながら黙って優がバイクに乗るしなやかな動きを見ていた。
「バイクは夏はいい」
優は急にそう言うから、首を傾げると横目に私を見て笑った。
「風が生ぬるいけど、どこか安心する」
……ほら、
優はこんなにもーーーー