姫はワケあり黒猫様
『……ん…』
ジャリ、と金属のこすれる音を聞いて目を覚ました。
あれ、というか……私、寝てたっけ?
ボーッとする頭で色々考えていたら正面にある扉が開いた。
「……起きたか」
その声にハッとしてその人を見る。
茶髪に切れ長の目をした長身の男。
『……誰…ッ?!』
誰かと聞こうとしたら手が自由にならないことが感じられた。
後ろに目を向けると手錠で拘束されていた。
それに、驚いたのは……
この部屋だった。
私と茶髪の何かする音以外何も聞こえない、鉄の部屋。
所々には黒くなった血らしきものが壁の隅に飛び散っていた。
黒くなりすぎていて、だいぶ昔のモノだとは見てわかった。
『……』
「…ヒラモトさんがお呼びだ。
早く出ろ」
『……』
ヒラモトさん?
何、誰?
思考が上手く纏まらなくて混乱していると茶髪の男は痺れを切らしたように私に近寄ってきて私の腕を掴み上げた。
『……ッ離してよ‼』
「お前が遅いからだろ」
私に呆れの溜息を吐いてから部屋から出て行こうとした茶髪。
だけど、数歩歩いてからピタリと止まって顔を茶髪の背中に打ち付けた。
い、いった……
じわじわとくる痛みに涙が目に溜まってくる。
「……雷人、お前何してる?」
低い声が、私の耳に届いた。