姫はワケあり黒猫様
遠矢side
那琉と優が海に行って、何となくソワソワとした空間が作り上がっていた。
まぁ、あいつも覚悟を決めたって事で嬉しいっちゃ嬉しかったんだけど…
「………那琉の情報、マジで何にも教えてくれなかったよね、優」
悲しそうに言う紅羅はあの時を思い浮かべているんだろう。
確かに、そうなんだ。
優はいつも俺達の為に情報を纏め上げてくれる。
だけど、那琉は頑なに口を開かなかった。
「………」
玲は眉を寄せてずっと目を瞑っている。
こいつも、優を気にしていたから。
というか、全員気にしているのか。
優は本当に仲間なのに、どこか線を引いてしまうから。
紅羅とは少し違った線の引き方。
でも、引いてある事には違いない。
「困った奴だよ」
佳祐も副総長なりに困っているのだろう。
響はイライラしてきたのかタバコを吸い始めるし、夕季も不機嫌そうに頬杖をつきながら貧乏揺すりを繰り返す。
「………遠矢」
シン、と静まり返った数秒後に玲が突然口を開ける。
すっと目を開いてその目で俺を見る。
その目は少し揺れていたが、鋭い光を宿していた。
「………胸騒ぎがする」
………ーーピリリリ ピリリリー