姫はワケあり黒猫様
「………は?」
「…おい、那琉……」
蹴飛ばされた男は立ち上がって顔を上げた。
その顔がひどく美しく、凛々しい表情をしていた。
『煉は、本当は……』
「那琉!」
那琉の言葉を遮る煉、と呼ばれた男。
龍黎なんて知らねぇし、何なんだ?
俺達が恨みを買う事をしたのは、覚えがない。
「那琉……、どう言う事だ?」
少し疑問が絡まってきた頃に玲が那琉に問い質した。
「あー、もういいよ。」
龍黎の総長らしき煉ははぁ、と溜息を吐きながら那琉に視線を向けた。
「俺が、那琉に頼んだんだよ。
喧嘩できるように仕組んでって」
「あ゛?」
『……』
衝撃を受けるその言葉に唖然とした。
「……まぁ、那琉とはちょっと面識あってな。
偶々No.1の姫が那琉だって言うから、喧嘩ができるように仕向けてもらったのさ」
おわかり?とバカにしたように言う煉にイラっとしながら口を開いた。
「……喧嘩がしたいだけなのか?」
「うん。そ。
順位とかはどうでもいいんだよ。
ただ、俺達“龍黎”はバイクと喧嘩の好きな集まりだ。
だから、一度利用させてもらおうと思って。」
ニコリと笑った煉に冷たい感情を抱きながら溜息を吐いた。