姫はワケあり黒猫様
『…煉は、本当はいい奴なんだよ、多分』
「まぁ、那琉も無理矢理連れて来たし困惑してたけど」
煉は溜息を吐いて那琉に近づいてきた。
「那琉、手出せ」
『最低だよね、前から』
「何とでも」
煉は那琉の手錠をはずして伸びをした。
「、と言っても今日は萎えたからいいや。
雰囲気が、随分柔らかいんだね、蒼月は」
「緩いお前に言われたかねぇよ」
玲がいつもの真顔でそう答える。
『玲、怪我してない?』
「あぁ」と短く答えた玲の口の端は切れている。
まぁ、玲は意地っ張りだから。
那琉が困ったような顔で俺を見てくるけど、俺もどうしようもないので苦笑を返した。
『煉、喧嘩してる暇あるの?』
「あぁ、今はシーズン過ぎたし」
ムスッとした表情の煉はドアを見て「おい」と言った。
?
疑問に思っていると、そこから茶髪が顔を出した。
「雷人、下の奴等は?」
「全滅。そりゃぁもう綺麗に一発で全員」
「……手当てに当たってやってくれ」
「了解」
茶髪は雷人というらしい。
素直に煉の言う事を了承して部屋から出て行った。
静かな痛いほどの沈黙が部屋を締める。