姫はワケあり黒猫様
肩を掴まれ綺麗な男の顔が真ん前にあった。
「………俺が、俺等が誰か解ってるか?」
『…知り合いでしたっけ?』
首を傾げて綺麗な男の顔を凝視する。
いや、こんな綺麗な奴知り合いに居ない。
「………珍しすぎて何も言えませんね」
黒縁のメガネを指で押し上げながら少し笑ってるおしとやかな人。
「名前、何て言うんだ」
綺麗な男とは正反対……
『名前を聞く時は自分から言うんだよバーカ』
そう言うと、場の空気が凍った。
「……いい度胸だな」
「ぎゃははっお前のがバカだろ~」
「ぎゃははっ面白い女ぁ」
「可愛いのにねー」
「「………」」
何か……協調性ナイっ!
溜息を吐くと、綺麗な男がソファに座ったのが横目に見えてそっちを見る。
「俺は朝霧 玲-Asagiri Rei-。」
朝霧 玲?
………聞いた事がありそうな名前。
まぁいいや。
『うむ………
私は黒鷺 那琉。』
渋々名前を言うと、朝霧は満足気に口角を上げた。
「あ、俺達もしとこーか?」
目の大きい元気そうな男の子が自分たちを指差しながら笑った。
『………今思えばどっちでもいいや』
皆は私の言動を不思議そうにしてる。
『関わる事も無いんだからさ。』
そいや、朝霧の名前も別に覚えなくてよかったよね。
『ごめんごめん、名乗れなんて言った私がダメだったね。
んじゃサヨナラ』
ヒラヒラと手を振って教室のドアに向かって歩く。
あー、ミルフィーユ食べたいなぁ。
よし、せーちゃんに奢らせよ。
そんな事を考えていると、腕を急に掴まれて引っ張られた。