姫はワケあり黒猫様
倉庫に着いて、皆がクルマを下りる。
「……優」
玲が、こころなしかいつもより優しげに優の名前を呼ぶ。
「俺等は遠くの傘下だけ回ってくる。
……那琉を、頼んだぞ」
玲の絶対的な口調に優は俯いていた顔を少し上げてこくりと頷いた。
『……』
複雑な心境になって、玲の服の端を掴む。
それに気づいた玲が少し笑って私の頭に手を置いてくしゃっとした。
「……大丈夫だ。
少し壊れちまっても、お前達はまだ失われてはいない。」
……わからないよ、玲。
目を泳がせると玲は笑って手を離した。
「優は、何よりも他人を気遣う」
玲は仲間として、これを言ってるんだろうか?
「……大丈夫だ、
お前は強い。」
その言葉に少し苦い思いを抱きながら玲に笑みを向ける。
『……うん。
頑張る』
「頑張るものじゃねぇけど」と笑った玲は私の頭をもう一度くしゃっとしてから離れていってしまった遠矢達の所へ行った。
少し離れた位置に居る優に近づいて行く。
『……話を、しようか』
大丈夫。
今の自由を、手に入れられるのなら
私は、何でもできる。