姫はワケあり黒猫様








「……うん」









綺麗に微笑んだ顔は、




















名前に因んだ、優しい、王子様みたいだった。























「……俺、1つ那琉に言いたいことがあったんだ」




『何?』






「……寝れてるの?」




『……』





まぁ、そうか。






「国際となればあちらに合わせる時もあるだろ?




なら、その時とかは……」




『寝てるよ。



ちゃんと側に居てくれる人も居るから』






それは、もちろん






「伊東 成音さん?」




『……さすが。そこまで調べあげるとは』




「お褒め頂き光栄です」





クスクス笑う優は少し目を伏せた。








「……那琉、」





『ん?』



首を傾げて返事をすると優は口を一瞬躊躇したように止めたが、すぐに動かした。





「……多分、気づいてるだろうけど…




玲さ、よく悲しそうな瞳するでしょ?」











…確かにそうだった。





玲はいつも優しくてあたたかい瞳をもっているのに、





どこか悲しそうな色を写す。









「…それは、何れ那琉も知ることになる。







だけど、1つ約束して……」









一瞬瞳をおろしてからスッと意思のこもった瞳で私を射抜く。










「……玲は、十字架を背負ってる。








でも、それを……全てを、知った時…










那琉は、ずっと玲の中に居てあげて。」







本当に悲しそうにそう言う優に、不思議に思いながら笑った。










『うん、大丈夫。







玲には、蒼月にはいっぱい恩があるから』















そう言って笑って目を瞑った後、










優が唇を噛み締めて拳を握っていたことなんて、













気づけなかったーーーー……





















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