姫はワケあり黒猫様
「………そうか。」
煉は静かに立ち上がって私の目の前に立ってごしごしと私の目元を拭った。
「泣いた事、バレんなよ」
そう言いながらポンっと頭の上に手を置いてくしゃっと撫でた。
「あっ、那琉!大丈夫だった?!」
第一にとんで来たのは紅羅だった。
焦った様子がすごく可愛くてクスッと笑ってしまった。
『少し話してただけ』
笑ってそう言うと皆ホッとしたように肩の力を抜いた。
「………今日はこのへんで帰るぞ」
「あぁ。いつでもいらっしゃーい」
煉はそう言ってヒラヒラと手を振る。
それに振り返してからここまで来た車に乗り込んだ。
穏やかな雰囲気のまま車は倉庫につくまで無言だった。
ただ、その空間が
心地よくて、好きだった。