姫はワケあり黒猫様
『はー…終わっちゃった……』
「時間が?」
『うん』
もう7:30。
少し惜しいけど、帰らないと。
『んじゃ、帰るね』
「うん、バイバーイ」
紅羅が眉を下げながらバイバイ、と手を振る姿に申し訳なくなりながら玲と共に部屋から出た。
ーーーーーー
相変わらず静かな車内は少し寂しく思えた。
もう暫く会えないのか……
そう考えると気分が病んでくるので、頭を振る。
「那琉、」
玲が突然私を向いて口を開いた。
「明日からはメールと電話、増やすから」
まっすぐな瞳に見つめられてドキッとした。
それがバレてないかと心臓を加速させる。
「クッ、離してやんねぇよ」
顔を近づけてきた玲に反射的に目を瞑るとちゅっと音を立てて思いのあるキスがふってきた。
幸せすぎるこの時間に、酔っていた。
この時だけでも、
酔って、いたかったの。