姫はワケあり黒猫様
「何で100Mだけ?」
玲が不思議そうに聞いてきて、皆の視線も集まってることに気づいて苦笑しながら足を軽く叩いた。
『何か昔靭帯切ったかなんかしてさー。
長距離はあんまり走れないんだよね』
「……そうか、」
玲は、少し悲しそうに目を下げてから目を逸らした。
優も口を噤んで俯いていた。
2人とも、事故だということがわかっているんだと思う。
クラスの大半が何か軽ーい運動等で切れたなどと思っているんだろうけど。
事故で意識がない内に鈍く治ってしまっていて、もうそのままリハビリもあまりできずに退院した。
だから、歩くくらいなら全然大丈夫だけど、走りなどになるとクる。
「でー、100Mの1人は決まったけど、どこでも好きなとこ手ェ上げろー。
カブったら権力差な~」
何、権力差って。
若干この学校に恐怖を覚えていると、紅羅と夕季、響が200M、それいがいは100M。
楽しそうだなぁと呑気に思っていると、玲は溜息を吐いた。
『どーかした?』
「……いや、まだお前のこと何も知らねぇなと思って」
……玲の頭に猫耳が見えるのは気のせいなのか。
いやっ違うだろ!
ぜったい、少し垂れ下がって落ち込んでる感MAXの獣耳だろ!
胸を打たれた様にドキドキしていると、遠矢が訝しげに私に声をかけた。
『大丈夫、』と返すと遠矢はまたパソコンを再開した。
いつもいつもパソコン乙です。
蒼月の皆の競技決めが終わるとクラスメイトは適当にじゃんけんしながら種目を決めていた。
『楽しそ』
「混じってくれば?」
本気で言ってそうな優に少し恐怖を抱くと佳祐はケラケラと笑った。