姫はワケあり黒猫様
1500Mと3000Mは人気無さそうだなぁ。
何となく普通にそう思ってると、黒板はみるみるうちに埋まっていった。
「那琉。」
洸が肩にトントンと出席簿をしながら照れ臭そうに「無理するなよ」と呟いた。
………ヤダ、洸が可愛く見えた。
洸の出ていく姿をじっと見ていると、白い大きな手が私の視界を遮った。
それは間違いなく玲の手で、笑いながらその手を手で掴んで離した。
玲の顔を見るとムスッとふてくされた顔で私を見ていた。
「………先に言われた」
洸に、ということなんだろうか?
少し顔が赤くなるのがわかって目を逸らすと、玲は喉でクッと笑った。
『紅羅。』
「なぁに?」
『飴あげる』
「マジでッ?!」
飛び跳ねて寄ってきた紅羅に、この前成音に貰った飴を渡す。
何か、よくわからないけど会社に届けられた高級品らしい。
「うまっ。コレ美味しいよ!」
目を輝かせて言う紅羅に佳祐と遠矢が軽く笑った。
夕季と響も笑いながら頬を膨らませている紅羅にちょっかいかけていた。
優は寝てる。
体育祭は一週間後。
夏休みは終わってしまったけれど、少し先にはまた楽しいことが待っている。
だから、人生は楽しいのかもしれない。