姫はワケあり黒猫様
下の階に降りて廊下を突き進むと、アンティークな扉があった。
それを何の躊躇もなく玲は開けた。
「あら、随分遅かったわね」
「うるせぇよ。来たんだからいいだろ」
「お腹痛めて産んであげたお母様に向かってなんて口きいてんのよ」
「やめろって、五月蝿い」
「悟くんは黙ってて」
玲のお母さんとお父さん…らしき人物と喋っている玲の身長のデカさのせいで私は隠れている。
「って、今は玲なんてどうでもいいのよ。
女の子を差し出しなさい」
「言い方があぶネェんだよババア」
「誰がババアよガキ」
「うるせぇ幼稚園児」
「誰がです」「誰がだよ」
……息ピッタリ。
思わず拍手したい衝動に駆られるが、玲のお父さんとお母さんの前でそんな醜態は見せられない。
「……那琉っつーんだ」
「ーーーーえ…」
グッと私の背中に手を回して玲の隣に並ぶように前に押された。