姫はワケあり黒猫様
「那琉っ‼」
遠くで玲の声が聞こえた。
でも、今は無理だよ。
体が、震えてしょうがないんだ。
「っ那琉……‼」
荒い息が走った距離を表すかのように耳底にへばりついた。
『っ……』
「那琉‼」
低く、少し悲しそうな声に少しだけ心が揺れる。
言っちゃダメだ。
また、傷つけてしまうよ……
何分、玲に腕を掴まれていただろう。
いつの間にか雨が私達を刺す様に注がれていて。
「那琉……‼」
『っ何で…………‼』
一言、大声で発せたのは
『何で……、私達を壊したの…?!』
最悪な、言葉だった。