姫はワケあり黒猫様
残酷な真実と赤
『那綺-Naki-、学校遅れるよ』
「あ、あれ?時計止まってんだけど?!」
制服に着替えてクローゼットを閉めると同時に、布団の盛大に擦れる音と那綺のバカでかい声が聞こえた。
「那琉、起こせよ!」
『起こしてたよ。那綺が起きないんだもん』
急いでスウェットを脱いでパンツ一丁になる変態野郎。
『妹居るんだけど』
「家族愛‼」
訳わからん。
クスッと一つ笑ってから廊下に出ると、洗濯カゴを抱えるお母さん。
『お母さん、おはよ』
「おはよー。
また那綺は寝坊?」
『みたいだね』
「朝ご飯食べる時間は少しぐらいはありそうね。
下にお父さんも居るから、一緒に食べて来なさい。」
『うん、ありがと、お母さん』
ニコリと微笑んだお母さんはベランダに洗濯物を干しに行った。
『那綺、朝ご飯食べなって』
「おー。2分あればオッケーだな」
カッターシャツのボタンが掛け違えている那綺には、呆れと言う言葉しか出てこない。
ただ、胸元に無造作に縛ってあるヘタクソなネクタイのラインの数だけが自分の年上だと示していた。