姫はワケあり黒猫様
『お父さん、おはよ』
「…はよ」
「親父おはよー」
「……はよ」
お父さんは、私達子どもから見ても無口で無愛想だと思う。
だけど、不器用なだけで優しいことを生まれた時から一緒の私達は知っている。
テーブルの上においてあった朝ご飯のいい匂いに頬を緩ませた。
『いただきまーす』
「いただきます」
一般的な家庭料理。
ご飯にみそ汁、鮭の塩焼き、卵焼き。
お母さんの料理はどれも美味しい。
お父さんの鮭はもう骨と皮だけになってしまっていたけど。
何とも食欲をそそられるお母さんの料理に、最近は太りそうで困っている。
だけど、遅刻寸前と言うことに少しばかりは焦り、その美味しい朝食を5分で食べ切った。
『ごちそうさまっ。行ってくるね』
「ごちそうさま~。そんじゃ行くわ」
食器を流しに置いてバッグを引っ掴み、
外に那綺と共に出た。
「お前等おせぇよ」
「お、成音。
何で外で待ってんだよ」
「朝っぱらから人ん家押しかけるほど図々しくねぇよ」
「『……』」
「疑わしい目で見てくんじゃねぇよ」
怪訝な表情をした成音に笑いながら、那綺はバイクを車庫に取りに行った。
成音は、一応お兄ちゃんの那綺の同級生。
バイクに跨って茶色の髪を靡かせる様はとても高校生には見えない。
まぁ、それこそ那綺は落ち着きもなければ恥じらいもない。
それに考えは幼稚で馬鹿げてる。
だからこそ、人一倍大人の成音が那綺をサポートしてくれている。
「お待たせー。よし、那琉、乗れ」
『言われなくてもね』
私は中学2年生。
私達は4つ離れてるから、今那綺達は高校3年生。
修学旅行も去年行って来て、ネズミと写真をとって来ていた。
ただ、登校は同じだ。
幼稚園から高校までエスカレーター式の学校に入ってる私達はどうせは校舎が違うだけで同じ敷地内に居るのだ。
まぁ、お昼も3人で食べてるし。