姫はワケあり黒猫様





『ありがと』


「おう。


おフクロには10:30に帰って来るって言っといて。飯は成音達と食って来るから」



『はいよ。



気をつけてね』




「うぃ~す」




2人は適当に返事しながらバイクで去って行った。





まったく。暴走族に入るのは勝手だが、お母さんに迷惑をかけるのは関心しない。



鍵でドアを開けながら息を吐いた。


『ただいま〜』



「おっかえりー」



居るはずのない家族の返事が聞こえて目を見開いてフリーズしていると、リビングからひょっこりお母さんが顔を出した。



「やだ、あんた何やってんの?」




『な、何でお母さん……』



「え?パパも居るわよ?」



『な、なん……!』




「え?言ってなかった?


今日、悟くんと香利奈が来てるのよ」




『……誰?』


「パパとママの親友~」



……



『いや、知らないよ』



「だよね~会わせたことないし~」




……怒っていいですか。



「陽奈?何してんの~?」



お母さんの声とは違う女の人の声が聞こえて、本当に客人が居るのだと確認できた。



「那琉?帰って来てるなら来い」




お父さんの声が聞こえてお母さんに連れられ、仕方なくリビングに顔を出すと、






美男美女が隣り合わせにソファーに座っていた。




『……こんにちは』



「こんにちは~。部活はやってないのね。那琉ちゃんよねぇ?まぁ~、陽奈と彰くんとの子供なだけあって綺麗な顔ね~。お父さんとお母さん優しい?あ、私の隣に座ってるのは悟。無愛想だけど、ちゃんと感情もってるし優しいのよ~。あ、彰くんも無愛想だしよくわかってるかぁ。さすが那琉ちゃん。私の思ってた通りの子だわぁ~。本当あのバカ息子とは全然…「香利奈、一度黙れ」






マシンガンの如く喋り続ける香利奈さんに一括したのは隣に座る悟さん。



彼にもこんにちは、と挨拶するとぺこりと頭を軽く下げられた。



『………』




呼ばれたからと言って何もすることは無いらしく、暫く無言で居ると悟さんが口を開いた。




「……子供も連れてくればいい。



そこには既に俺の息子も居る」



「あ、そうか。那琉と同い年だったなぁ。


元気か?」



「あぁ。


昔の俺達のようにバカやってる」



「はー?悟くん、一言抜けてるわよ?



あの子は女遊びだけは絶対しないからね!」



「……」



黙り込んだ悟さんは、若い頃してたと見られる。




だが、悟さんはサラリと涼しい顔で流した。




「那綺くんには世話になってるな」



「別にそうでもないんじゃないか?」




彰、もといお父さんは苦笑しながら頬杖をついた。




『……お母さん、』



「ん~?」




『上行ってい?』



「あ、そうそう。


本題はね、香利奈ん家……朝霧家の別荘に誘われたのよ。」



「別荘と言うよりは、経営してるリゾートみたいなモンだけど」




香利奈さんは苦笑しながら私に向かって微笑んだ。



「ぜひ来てちょうだい。


息子も遊ぶ相手ができて喜ぶわ」



「いや、那綺と遊ぶでしょ」



「まず、遊ぶとかそーゆー年じゃねぇよ」



『……あ、ありがとうございます』





「うん!


あー、明日楽しみね!」




……………





うん?




な ん て ?




『急じゃない?!』



「いや、大分前から言われてたわよ」



『言えや‼』



キレると、お母さんはケラケラ笑いながら「まぁまぁ」と受け流した。





「楽しみね~」





香利奈さんは楽しそうに笑った。










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