姫はワケあり黒猫様
「ただいまっ‼」
「お帰り~」
「……お帰り」
『お帰り~』
「おいっ、お帰りじゃねェよ‼
何だよ泊まりって?!」
「あら、聞いたの」
「だから急いで帰って来たんだろ?!」
那綺はぜぇぜぇ息を吐いてから私のコップに入った麦茶を飲んだ。
『やめてよ汚いっ‼』
「兄妹だろが」
ふぅーと息を吐いて那綺は壁にもたれかかった。
『荷物纏めといたよ』
「うん、やってくれてるとは思ってた」
那綺は何ともないように言って屈託なく笑った。
屈託ないところが余計腹立つ。
「楽しみだなぁ」
「成音くんも誘ったからね」
「………………は?」
那綺のその反応だと、知らなかったようだ。
私はさっき聞かされたけど。
「おー!3人で旅行って何か盛り上がるな!」
『……………』
「那琉は、那琉」
「……あ、4人」
『いいもん。
お母さんとお父さんと遊んでるから』
拗ねたように言うと、那綺は笑いながら「拗ねるな」と頭をくしゃっと撫でられた。
「楽しみだなぁ」
知らなかったよね。
悲しくて悲しくて
涙が枯れてしまう出来事があるなんて。
ワカンナカッタンダヨネ。