姫はワケあり黒猫様





成音side






本家の自室に閉じ籠った那琉。





………知ってた。






玲と接触してることも、恋心まで抱いたことも。





全て。









だけど、止められはしなかったし、止めたくもなかった。






玲。






あいつは今、何をしているんだろうか。






カチャ、と今日も食べてくれなかった飯を流しに置く。




虚しい。そんな感情があっているのだろうか。





違う気もするし、そうのような気もする。






水を溜めたシンクに写った自分の顔が






ひどく辛そうな顔をしていたのに苛立った。







辛いのはお前じゃないだろ。那琉だろ。お前は加害者だ。何をそんなに傷ついたような顔をしてる。







ーーーー




「………消して、くれ…」












小さく呟いた声は、キッチンで波動を起こさず消え去った。










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