姫はワケあり黒猫様
「………那琉」
ドアの間からくぐもった声が聞こえてビクリと肩を揺らした。
「………一度でいい。
ドアを開けてみ。
今、開けないと………多分。
那琉は一生後悔する」
カッカッと靴音を鳴らしながら去った成音の言葉を繰り返す。
後悔?
何で?
わからない。
でも、
後悔なんて、したくない。
しばらくジッとしていて、少し時間がたってからそっとドアを開ける。
ほわりと味噌汁のいい匂いがした。
だけど、目に入ったのはいくつも積み重ねられたシンプルな白い封筒だった。
それを全て手に取る。
………何、コレ。
カサ、と音を立てる紙を持って部屋の中に移動した。