姫はワケあり黒猫様
裏を向けると、“那琉へ”と少し癖のある繋ぎ字があった。
………これ、は。
玲の字だ。
テストを見せ合った時に見た、玲の字の書き方だ。
ドクン、と心臓が跳ねた。
全ての封筒を漁る。
全ての封筒には那琉へ、と同じ時が並んでいる。
目の前に散らばった一通一通に焦点を合わせず、目を泳がせた。
どー…して。
見たくないよ。
怖いよ。
ヤだよ‼
ーーー「那琉は一生後悔する」
………したくも、ないんだ。
深呼吸をして、封筒を開ける。
ーーー見る、だけなんだ。
そんなに緊張するなよ…
自分に言い聞かせて見た便箋を開けていくごとに、
胸は悲鳴を上げ、目の追う速さが増した。