姫はワケあり黒猫様
遠矢side
「「「…………」」」
「……那琉~俺殺されるから起きて~」
眠そうに頭をカクカクさせていた那琉は寝てしまった。
そして、玲が那琉の耳元で囁いたから優の方に倒れこんで、今は優に膝枕されてる状態。
優は少し顔を青くしながら那琉の肩を揺さぶる。
「起きるよ、やめてあげな」
俺がそう言うと、優は苦い表情をして揺さぶっていた手を下ろした。
「……ホント、不思議な子」
俺がそう呟くと、皆もこくりと頷いた。
そこ等の女と一緒だと、思い込んだ俺。
だけど、実際はそこ等の女とは比べ物にならないくらいいい子だった。
希少な女の子は俺達にとって初めてだった。
蒼月の先輩達はそれぞれ良い人を見つけていってたのを見て、幹部になって当たり前に現れると思っていたが、全然だった。
玲は女に興味が無いし、響は女を性欲処理道具としか思ってないし、紅羅は女を認識してないし、夕季は女が嫌いだし…
俺等の代は蒼月でも過去最高に女に縁が無い代だった。
だけど、そんな中……
那琉が現れた。
玲のあの事件から、4年くらいか…な?
玲へのチャンスなのか、蒼月へのチャンスなのかわからないが、どちらにしろ俺達のプラスになる女の子が現れた。
那琉は俺達に媚びることはこれからも無いと思うし、裏切るとも思えない。
……だけど、離れていきそうな気はする。
それに、あの黒い瞳は澱んでいる。
……闇の、ある目だった。
……玲と同じ、目。
……頼むから、離れていかないでほしい。
玲から。