姫はワケあり黒猫様





ガラガラ




「ようこそ、蒼月に」




遠矢は瞳に怪しい光を宿して私を振り返った。








倉庫の中は光と活気に満ちていて、騒ぎ声が絶えない。







一人一人のメンツの子達は笑顔でバイクを弄ってたり、喋ったり、トランプしている。






何をやっていても、全員笑顔で……








綺麗で輝かしかった。













『……』




思わず倉庫の中に魅入ると、色の白い骨ばった手が私の目の前を遮断した。




「……玲、見てみろ」




その手は意外にも夕季のもので、ビックリしたけど夕季の言った意味がわからなくて玲をみると……






鬼だった。





すぐに目を逸らして前に居る夕季を見る。




もう手を下ろしていつの間にかチュッパを食べている。




か、可愛い……





…じゃなくて‼




何で玲鬼になってんの?!




夕季の服の裾を引っ張ると、夕季は私を見て鼻で笑って「鈍感」と呟いた。






カッチーン。




『んだと?


喧嘩なら買うよ?』



「その言葉そっくりそのまま返すぜ」




夕季は今までの様子とは違い、私に興味を持った柔らかい瞳で私を見てくれた。




「こらこら。



夕季なんかに喧嘩売っちゃだめ。


それに、夕季も買うんじゃないの。」




お母さんみたいに言う遠矢は私と夕季の頭を撫でた。





それを夕季は鬱陶しそうに払ってスタスタと地下へと続く階段を降りて行った。








……




地下?!




『え?ここ地下室なんてあるの?』




「うん、案外でかい地下室がね。



そこを降りて廊下から行けるのが、幹部部屋と総長室。




遠矢は楽しそうに地下室の方向を見ながら話していた。




玲はまだ不機嫌そうに表情を膨らませている。





「総長こんにちは!」


「あっ、遠矢さんも!」


「総長こんにちはっす~」




色んなメンツの子が玲に寄っていく。




その中、何人かのメンツの子と目があった。











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