姫はワケあり黒猫様
私と少し間をあけて皆もついてくる。
何だ、皆くるなら一緒に行けばいい話じゃん。
はーっと溜息を吐きながらも待つことはしなかった。
だって、めんどいもん。
ステージの段差をトンっと飛び越えたら目線の高さは当たり前に上になり、少しテンションが上がった。
玲はほぼど真ん中に居て、それに近づいて行く。
途中でチラリと佳祐を見るとまた微笑んで口パクで「行け」と言った。
てか、次は命令か。
内心どんよりとした気持ちをしながら顔は引き攣るほどに笑顔を作り上げている。
あぁ、明日は筋肉痛だ。頬の。
私は頬をやわやわと触りながら玲に近づくと玲はふっと笑って私の髪に指を通した。
その毛先があたって、またくすぐったいがもう怒られるのは御免なので堪える。
『……玲、私なんでここに連れてこられたの?』
そう聞くと、玲は目を見開き、すぐに納得した様にわらって私の髪から指を引き抜いた。
「堂々としていろ。
話は勝手に進む」
……それってどういうーー
聞こうと口をあけた瞬間、体をビリビリとさせるほどの声が倉庫に広がった。
「静かにしろ‼」
佳祐の数倍低い大きな声は倉庫に響き渡り、倉庫内の人は誰一人として喋らず、ただじっと佳祐を見つめた。
佳祐はその視線に応える様に口を開けた。
「急に呼び出して悪りぃ。
少し、総長の話があってな。
ほれ、玲」
佳祐はくいっと顎でカラフル集団を指す。
玲は眉を寄せながらも口を開いた。
「……今日から蒼月に出入りする女だ。
しっかり顔覚えとけ。」
……はい?
『One more time?』
「何でお前が聞き返すんだよ」
響はケケっと特徴のある笑い声を零した。