姫はワケあり黒猫様
「……総長」
「何だ?」
1人の凛々しい顔をした男の子が瞳を柔らかくしながらステージに向かって一歩前に出た。
すっと膝を折って頭を下げ、胸に片手を当てる。
「姫に、絶対の安全と姫自身への忠誠を、この場の全員は誓います」
「……フ…」
柔らかく微笑む玲の視線の先には男の子。
男の子は顔を上げて私を見て、私も男の子を見ていたから目が合って……
ぎこちなく微笑むと、倍の笑顔で返された。
はぅっ、若い子の笑顔って素晴らしい!←
「……那琉、何か言いたいことがあるなら、今言え」
玲は私を見てカラフルな皆をチラリと横目に見た。
ごくりと喉を鳴らしながら緊張で固まった足を必死に動かす。
ステージの下にトンっと下りると、辺りが少しだけ騒がしくなった。
玲も、佳祐達も目を見開いていたのは、前を向いていた私にはわからなかった。
『……ぇと、黒鷺 那琉です。
姫に……なっちゃったのかな?
でも、姫と思わないで下さい。』
その言葉に困惑の表情を見せるメンツの子達に微笑みながらまた口を開いた。
『いつか、あなた達の本当に求める姫となる人が現れるかもしれない。
だとしたら、その人もだけど……あなた達自身、私を姫と思ったことを後悔する時がくるかもしれない。
そんなの、嫌じゃない?』
笑いながらそう言うと、メンツの子達は目を見開きながらも私をじっと見ていてくれた。
『……だから、私はあなた達に迷惑をかけることはしない。
それに、あなた達に必要以上に関わらないから。
………少しの間、あなた達の傍に居させて欲しい。』
・・・・・・・
静寂は空気を冷やし、肌を刺す様に刺激する。
『………私も、何らかの形であなた達を助けるから。
役に立つと、私も誓います』
さっきの男の子の真似をして膝を折って頭を下げながら胸に手を当てた。
それに一気に騒がしくなり、気づけば体は上がっていた。