姫はワケあり黒猫様
「那琉さん!俺らにそんな下から目線しないで下さい!」
「そっすよ!ただでさえ俺らなんて下っ端の1人なんすから!」
「頭上げてくださいっ!」
私の肩に置かれた手。
私に向けられる数々の視線。
私の涙腺を緩ませる皆の口。
あぁ、ここは………
『あったかいや…』
ボソッと呟いた言葉は皆の声に掻き消された。
「………那琉」
後ろから突如として玲の声がかかった。
「お前は蒼月の姫だ。
メンツへの忠誠を誓うのも別にいいが、
俺達がお前を姫にして後悔する日は絶対に無い」
玲の言葉に、涙腺が崩壊寸前まできた。
『………っ言い切れないでしょーが…』
「言い切れる。
お前は、最高の女だ。
………それに、
俺が選んだんだぞ?」
近くによってきていた玲の囁きが耳元にかかり、ぞくりと背筋を震わせた。
「………後戻りはできない。
俺達は、お前に絶対を誓う」
………泣いちゃう、じゃんか…
『ふ……、…』
「あははっ、もー、那琉泣いちゃって~」
紅羅は笑いながら私の頬をぷにぷにと人差し指で突っつく。
玲の温かい手は私の頭の上で優しく撫でてくれる。
『……後戻りなんて、するき無くなったじゃにゃいか‼』
泣きじゃくりながらそう言うと、みんなは驚いた様に私を見てから優しげに微笑んだ。
「…るせぇよ、ばーか……」
夕季は口を尖らせながらも私にハンカチを貸してくれる。
それで顔を押さえると皆は笑った。
……温かい。
肌を刺す様な刺々しい刺激は、無くなり、
ただただ温かい空気がその場を包んだ。