姫はワケあり黒猫様
「……さっきの着メロ何だ?」
『にゃんにゃがにゃんにゃんの主題歌だよ!知らないのかッ!』
「んだ、それ」
呆れたように呟きながらフッと笑った玲の横顔にどきっとしたのは、心の中だけの秘密。
『にゃんにゃがにゃんにゃんは、たくさんの捨て猫を拾って自分の子供にするんだ』
「……暗い話………悲しい話だな」
『そう?
ステキな設定だと思ったけど』
助けてくれるんだよ。
『…ヒーローが現実に居ないなら、空想上でしか作る事ができない。』
急に喋り出した私の顔を横目にチラリと見る玲。
玲の方向を向かず前を向いたまま口を動かし続けた。
『……空想上だけでいいから、縋れるヒーローが欲しかったの。
……それだけで、猫は普通だったのに好きになれた。
思い込みでも。
縋れるモノが欲しかった』
自分の弱さを、愚かさを。
捨てずに拾ってくれるヒーロー。
そんなの、居ないとわかってしまっていたから。
空想上だけで、裏切らない縋るモノが欲しかった。
「…………」
黙って先を進む玲の隣で少し目を伏せて自嘲するかのように口角を上げた。
…私は1人でもいいけど、縋るモノが欲しく無かったわけではなかったから。
ズキンと痛む頭を拳を握って紛らす。
『……玲、送ってくれなくてもいいんだよ…?』
「は?」
『……1人で行けるから、』
「………」
玲は黙ってついてこい、と言いたげに私を睨んでからスピードをあげて私の前を進んで行った。