姫はワケあり黒猫様
連れてこられたのは、この前の地下室の隣の部屋。
幹部部屋と同じくらい大きくて、窓をカーテンで締め切っているからか、少し薄暗い。
大きなベッドと、黒いクローゼット。
チェスのやりかけ状態の物。
全てが全て、どこか綺麗だった。
私にも、ハッキリとはわからないのに。
そんな事を考えていて、自分の状況を忘れていた。
でも、それは一瞬で、玲にベッドに突き飛ばされる。
そのまま、背中に柔らかい感触を受けながら寝転がった。
その上に玲は覆いかぶさってきて。
目をじっと見続けると、玲は眉をひそめた。
「………自覚を、持てよ」
『え?』
思わず、聞き返してしまった。
玲の吐き出された言葉は思っていた以上に弱々しい声で、驚いた。
まじまじと玲の顔をみれば、玲は口を大きく開いた。
「お前が心配なんだよ………‼
俺に頼る事も絶対しなさそうで、ましてや遠矢や夕季にも‼
………、お前が消えそうで儚いとこをみると、どうしようもなく不安になんだよ…」
玲は最後は弱々しく喋っていた。
玲の言葉に心がじわじわと熱を持ち始めた。
「………頼むから…
俺の目の届くところに居ろ………」
『………っ…』
何で………そんな不安そうなんだよ…
『………』
でも、返事は出来なかった。
例え、何か運命を変える道を歩いたとしても、
私は、この道に戻るだろうから。