姫はワケあり黒猫様
唯一無二の存在
『よしっ』
歯磨きしたあとの清潔な歯を左右に引っ張って見る。
八重歯が少し人より目立つのが気になるが……
遺伝だ、しょうがない。
『久しぶりだなぁ~。
っていっても、3〜4日ぶりか?』
少しワクワクしながらソファに座って体を揺する。
あー、人に会うことって、こんなに楽しいっけ?
………アイツだから、なのかな?
目を瞑って今も思い出す優しい声と力強い言葉に心がやすらぐ。
「ーーーー僕が、ずっとそばに居てあげるから」
あの言葉だけを信じて、何となく生きてた世界。
でも、日本に帰って来て………
色がついた気が、するんだ。
自分でも無意識のうちに笑っていて不気味だと思った。
「何笑ってるの?」
『うひあ………‼』
後ろから急にぎゅーっと抱きしめられて、高い声が口をつく。
『成音!』
「おかえり、那琉」
『………いや、ただいま…いや、今度はそっちがただいまじゃない?』
クスクスと笑って私の体から自身の体を離して、ソファの前まで来て向き合う体制となる。
『お帰りー』
「クス、ただいま」
ほわりと笑って成音は満足気にぎゅっと私を抱きしめる。
………何度目(笑
『成音ー、』
「もう、無理」
そう言って、ソファに倒される体。
成音はネクタイを緩めながら私をそのまま抱きしめた。