あなたが教えてくれた世界
『ショックねぇ……。大変だったのはわかるけど、いつまでもあの状態だとこっちも困るからな……』
『そうね……。皇王様や女王様も、はやくいつもの姫様に戻ってほしがっていらっしゃったわ』
部屋の外から漏れ聞こえる声を、アルディスはベッドの中から聞いていた。
彼女は寝込んでなんか、いなかった。
むしろ眠ろうとしても、夢にあの地下室での光景が出てくるので深い眠りにつくことも出来ず。
外の会話の内容を全て理解出来たわけではなかったけれど、城じゅうの人々がアルディスに前のようになってほしいと思っているのは分かっていた。
分かってはいたのだが、寝不足で起き上がることも出来ず、誰かと接すると、その相手が誰であろうと、あの日の地下での人々の様子と重なってしまい。
『晩餐会や舞踏会だって、いつまでも姫様が不参加でいるわけにはいかないし……大丈夫なのか……?』
非情にも響いてくる声に、アルディスの身体がびくんと跳ねた。
(いや……)
自分が迷惑をかけているのは知っている。
(いやだ……)
周りが自分にどう振舞ってほしいのかも知っている。
(いやだ……!!)
……でも、アルディスがどんなにそれに応えたくても、身体がそう動いてはくれない。
恐怖が、トラウマが先に現れて、皇女らしく振る舞う事ができない。