あなたが教えてくれた世界
『大丈夫じゃないわよね……。どちらにしろ、姫様にははやくもとに戻っていただかないと困るわ……』
(ききたくない……!!)
幼いアルディスは、枕をぎゅ、と握りしめ、布団を頭から被って小さくなって震えた。
(ききたくないききたくないききたくない……!!)
耳を強く塞ぐと、扉の間から漏れる会話は聞こえなくなった。
その代わり、今度は彼女の心の耳によって、城中の者の彼女への不満が直後聞こえてきた。
『遠方からのお客様がいらっしゃったとき、皇女様の泣き声が聞こえるとびっくりされるから困る……』
『予定が全部狂う。姫様はいつまでああなさるおつもりだ』
『幼いから責めることも出来ないし、そのくせ皇女だから放っておくことも出来ないし、難儀だ……』
『そんなに大騒ぎするほどのことだったのか?未遂だったんだし何もされてないんだろ?お城でぬくぬくと育てられているから弱っちいのかもな』
そんな、何千何万と言う思いや、言葉にならないもやもやした不満や悪意がまっすぐアルディスに降りかかった。
(ごめんなさい……)
いつの間にかしゃくりあげていたアルディスは、頭の中でただその言葉を繰り返した。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……)
同時に彼女の中で沸き上がった、一つの思い。
(どうしてわたしには、こころのこえがきこえるの……?)
もう、聞きたくないと思った。