あなたが教えてくれた世界
いつの間にか震えだしたアルディスの中に残る、どこか冷静な部分がそう考える。
そう言えば、税を取り立てる官吏に対する恐怖の感情もあった。
つまり、それは。
(……だめ……!!)
恐怖に震えるもう一人のアルディスが、その結論を出すのを拒む。
考えては、いけない。
民衆が苦しんでいる、根本的な理由に気付いてはいけない。
(いや……!!)
早く、早くこの発作がおさまってほしい。
長らく経験していなかったから、いつの間にか対処法を忘れてしまった。
……ああ、そう言えば、対処法なんてなかったんだっけ。
だったら、いつものように……何も感じなくなればいいんだ。
アルディスは、震える瞼をぎゅっと瞑った。
自分を心の深い奥に閉じ込めて、一切の出来事から目を背ける。
簡単なことじゃないか……。