あなたが教えてくれた世界



(焚き火にあたれば、冷える事はないわよね。寝る時はどうしましょう?夜中は冷えるから、焚き火は消さない方が良いわよね。でも煙は、盗賊とかに狙われかねないし……)


頭と同じくらい、手もよく動き、芋が次々と裸にされていく。


(そもそも野外で寝るのは寝心地悪いわよね?馬車の中の方がクッションはあるから、寝やすいのはそっちなのかしら……。でも、いくら毛布があるとは言え、少し寒いかもしれないし……)


毛布、という所でオリビアはふと、アルディスが今寒くないのかと思い浮かんだ。


毛布を一枚渡して来ようか。


そう思いながら様子を見ようと振り返った時、その翠の瞳に映ったのは……。


(え……)


先ほどまで確かに少女がいたところに誰もいない、そんな光景。


「アルディス……?」


唇から小さな声が漏れた。


急いで辺りを見渡す。しかし、見える範囲の場所に彼女の姿はない。


オリビアの手から、皮を剥きかけの芋が滑り落ちた。


「──アルディス!!」


オリビアは、大きな声で彼女を呼ぶと、その姿を求めて足を踏み出した。


「オリビア、どうした?」


様子がおかしい幼馴染に声をハリスは声をかける。


しかし彼女はそれに答える事をせず、雨宿りしていた木の周りを早足で一周し、馬車のなかを確認し、休ませていた馬の近くを見、さらには近くを流れる川の方も捜索した。


しかし、探す桜色の少女は、その何処にもいない。


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