あなたが教えてくれた世界



(ったく、いつの間に……)


注意を向けてなかった自分を恨む。


なんだか睨まれる気がしたからと言って、そちらを見ないようにしていたのは間違いだった。


(にしても……俺何かしたっけ?)


ほぼ初対面で、あそこまで嫌われる覚えはないのだが。


目が合うとわざとらしく反らされた事を思い出す。


仲良くなる気はなかったが、嫌われるのもそれはそれで面倒だ。


溜め息をつきそうになりながら、イグナスはさらに足を進める。


と、


ガサガサっ


少し離れた場所から茂みを掻き分けるような音が聞こえて、イグナスは身構えた。


そちらの方に全神経を集中させ、音をたてた正体を見極めようと目を凝らす。


……やがて、かさかさと音をたて、木陰から顔を出した少女の桜色の瞳と視線が交わった。


お互い間抜けに見つめあったまま、数瞬が過ぎる。


「……え?」


「…………!!」


やがて、我に反ったイグナスが沢山の思いがつまった疑問を吐き出すと同時、相手の少女が目を見開いて驚愕の表情を表した。


次の瞬間、くるりと踵を返して、さらに森の奥へと走り出す。


「……あ?ちょ、待て!!何で逃げる!!……って言うか、賊はどうしたんだよ!?」


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