あなたが教えてくれた世界


オリビアとはあまり話した事が無いが、噂 だけなら何度か耳にした事がある。


その噂と言うのがまたありえなさそうな話 なのだが……。


アンはまた、ゴシップ好きな先輩使用人の 顔を思い出した。


『どんなに立派に見えたって、どこの宮殿 にも血の悩みはつきものだからね……』


その半分面白がるような口調がまだ耳に残 っている。


彼女の話によると、オリビアはアルディス の姉だと言うのだ。


『どういうことですか?』


始めわけがわからずにアンは聞き返した。


『お嬢様の姉ということは、オリビアさん も王位継承者になるという事ですよね。本 来私達にお世話される立場の人が、なぜこ こで働いてなんているんです?』


すると彼女は、困ったような表情を見せた 。


『あくまで噂だし、わたしも聞きかじった ことしかないんだけどね……、彼女が皇王 様の娘だと言うことは、公にされてないん だよ』


『何故ですか……?』


『女王のアムネリス様が怒って彼女の母親 を王宮から追い出したからだとか、色々言 われてるけど、本当の所はわからないね』


アンはその話を何となく腑に落ちない気分 で聞いていたのを覚えている。


『……それで、王女の地位を奪われた彼女 は、他に行くところがなかったから宮殿で 働き始めたわけ。結構小さい頃からだった らしいよ。私が働き始めた頃はもういたか ら』


『その時、オリビアさんいくつだったんで すか?』


『まだ10歳にもなってなかったって聞い たよ。もちろんその時は庭師とか料理人の 下働きだったみたいだけど』


『……10歳…………』



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