あなたが教えてくれた世界



(そんなに俺といるのが嫌かよ……)


俺何かしたかなぁ……と本日何回目かになるぼやきを心中で繰り返す。


(面倒くせぇ……)


思わず、はぁぁ、と大きな溜め息をついた。





     *   *   *





どうしよう、何で、こんなことになっているのだろう。


アルディスは硬直して顔を上げられないまま、ぐるぐると頭のなかにそんな疑問詞を飛び交わせていた。


目の前にいるのはあの、黒髪の騎士。


出来る限り近付かないようにしていたのに、どこで間違えてこんな状態になったのだ。


とりあえずもう二、三歩くらい離れたいと思うのだが、全身も硬直していて足が思い通りに動かない。


その時、はぁぁ、と大きな溜め息が聞こえた。


(溜め息……?)


この男、今、溜め息をついたのか。


(そんな、あからさまな反応しなくても良いじゃない……)


溜め息なんて初めてつかれた。


すぐ近くから伝わってくる感情は……“面倒くさい”の一言に満ちている。


(面倒くさい……!!)


畏怖や憎悪や、自分を利用しようという下心を含んだ感情ならぶつけられ慣れていたが、面倒などと思われたのは初めてだったので、違う意味で衝撃を受けた。


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