あなたが教えてくれた世界



悪い人じゃないことはわかっている、しかし……


(やっぱり、あの目は嫌い……)


どうしてあんなにも、まっすぐに見つめられるのだろう。


今気付いた。先ほど聞こえた面倒くさいと言う感情は、仕事に対してではなく憮然とした態度のアルディス自身に向けられたものだ。


自分が面倒だと思われていたのも納得出来る訳ではないが、彼が仕事に対するまっすぐな思いをもっていることは純粋にすごいと思う。


こんな、逃げ出すような面倒くさい少女を必死になって探してくれるのだから。


「……はぁ、とりあえず帰るぞ」


……また溜め息をつかれた。しかも当たり前のように命令口調なのが気に入らない。


前言撤回。彼がまっすぐな人なのは認めるけれど、あの態度はなんとなく気に入らない。


彼女自身に威厳がないから仕方ないことなのかもしれないし、そんなことを気にしたことも無かったのだが。


そう言えばオリビアも侍女らしくない話し方をするが、でもやはりこの男だとなんとなく許せない。


……とは思うものの、それを口に出して訴える事は出来ず。


再び憮然とするアルディスに、男は呆れたように言う。


「お前なあ……、まあ良いや。お前もいつまでも俺といるより帰った方が良いだろ」


それはその通りだと思い、彼女は足を踏み出そうとし……てやめた。


このまま何もせず言われた通りに動くのは何だか我慢できない。



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