あなたが教えてくれた世界
「それが……なんて説明したら良いかわからないのだけど……」
「?……体調が悪そうとかか?」
心配そうな表情を見せるハリスに、オリビアは慌てて訂正を入れる。
「そう言う事ではないの。むしろ、良いことだと言うのか、なんて言うか……」
オリビアが珍しく要領を得ない説明をするので、ハリスの頭の上には疑問符が飛び交っている。
「あのね……うーん、なんて言うのか、さっきからよく喋るのよ、アルディスが……」
「喋る……?アルディス様が?」
オリビアはこくんと頷いた。
「そうなの。今もそうだし、さっきもあの、ブレンダって言う子、あの子にも答えてたし……」
「それは驚いたな……。何かあったのか?」
彼女は目を伏せた。
「……わからないの。だから、どうしたのかしらと思って……」
「そうか……。僕もわからないし……」
そう言って戸惑う様に彷徨った彼の視線が、不意にある一点で止まった。
不思議に思ってそれを追いかけると、その先には、背中を別の木の幹に預け、少し離れた所で一人で晩飯を食べている黒髪の騎士の姿があった。
──イグナス・コヴァート、と言ったっけ……。
彼女の視線もまた、彼に留まる。
オリビアがアルディスのそばにいない間……特に、アルディスがいなくなった時、そばにいた人物である。
──何か、知ってるかもしれない……。