あなたが教えてくれた世界
「……聞いてくるわ」
「え?」
ほぼ無意識のうちに、隣のハリスにそう呟いて足を踏み出す。
「え?オリビア、何を?」
「何があったのか……彼が知っていることを」
「え、ちょ……」
一瞬止めようと手を伸ばしかけたハリスだったが、オリビアの迷いのない視線と足取りを見て、諦めて一歩後ろをついていく。
「イグナス……さん?」
オリビアに声をかけられたイグナスは、その視線をゆっくりとそちらに向けた。
「……なんすか」
無愛想にそう答えるさまを見て、なんだかアルディスもこの男を睨んでいたような事を思い出した。
「アルディスに、何をしたの?」
……本当はもっと穏やかに聞く予定だったのに、心なしか攻めるような口調になってしまった。
ところがイグナスは、驚いたような顔をしたあと思いもよらない事を言った。
「いや、それ俺が聞きたかったんだけど……。俺、あいつに何かしてた?」
「……は?」
呆気にとられて聞き返すオリビア。
「何か俺、アルディスから完璧に嫌われてるんだよな……何か思い当たる節ないすか」
彼がアルディスを呼び捨てにしている事も気にならなくはなかったが、それよりも気になった事は、
「気付いてたのね……」
アルディスから嫌われている事にこの男が気がついていることだった。