あなたが教えてくれた世界


そう考えると、色々と不明瞭だった点がパ ズルのピースを埋めるように解消されてい くのがわかる。


(……もしかして……)


もちろん推論に過ぎない。しかしそれが一 番自然であることも確かだ。


アンは例の噂について、いくばくかその信 憑性を改めた。


「……ねえアルディス、いつまでそうやっ て逃げてるつもりなの?」


アンが頭の中であれこれ模索している間に も二人の会話は続いていたようで、オリビ アが一つため息をついてそう言った。


「そんな事してても何も変わらない。むし ろ苦しいだけよって、私この前も言ったわ よね」


(…………?)


突然アンの知らない話が始まったので、彼 女は戸惑った。


「自分自身と向き合って、ちゃんと周りに 目を向けないと、あなた一生このままよ? 」


(何の話……?)


よくわからないけどこの二人の関係に重要 そう。もしかしたら姉妹の話とも関係ある のかな。


アンがそんな事を思い、興味をもったちょ うどその時、アルディスが椅子から音をた てて立ち上がった。


何も言わないが、その横顔から会話を拒絶 するような意志が感じられる。


やがて、聖書にしおりを挟んでこちらに顔 を向けると、澄んだ声で言った。


「……晩餐会の、準備をして参ります」


話を遮断されたオリビアは黙って隣の部屋 にいくその姿を見つめていたが、やがて根 負けしたように言った。


「……わかった。手伝うわ」


夜会用の盛装のドレスは、一人で着替えら れる代物ではない。着替えを手伝う事も、 侍女の大切な仕事だった。



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